超高精細3Dプリンティングの可能性を拡げるガルバノスキャナー横浜国立大学 丸尾研究室
業種:教育機関・研究室
レーザー光を用いた超高精細3Dプリンティング技術の研究に長年取り組む丸尾研究室。フェムト秒レーザーによる二光子重合反応を利用し、マイクロメートルレベルの微細構造を造形する技術を発展させてきました。
現在では、光電融合、マイクロ光学素子、宇宙用微細部品、再生医療向けスキャフォールド、マイクロマシンなど、応用分野は大きく拡がっています。
その研究開発を支える重要な要素の一つが、レーザー光を高速・高精度に走査するガルバノスキャナーです。今回は、研究室で進められている先端研究と、ガルバノスキャナー導入の経緯、活用効果、今後の展望についてお話を伺いました。
01 背景超高精細造形を支える精度と安定性への挑戦
横浜国立大学 丸尾研究室では、約30年にわたりレーザーを活用した超高精細3Dプリンティング技術の研究開発に取り組んできました。
同研究室が開発・発展させてきた「二光子マイクロ光造形」は、100nm~1μmレベルの微細構造を形成できる世界トップクラスの造形技術として、フォトニクス、光通信、半導体、医療分野など幅広い領域で活用されています。近年は、光電融合技術向けの微細光学部品や光導波路、メタサーフェスなど、さらに大規模かつ高精度な造形が必要となる高度な研究テーマにも取り組んでいます。
こうした研究を進める中で、従来以上に高精度かつ高速なレーザー走査が求められるようになりました。特に、複雑な三次元微細構造の大面積造形や、多様な材料を組み合わせるマルチマテリアル造形では、加工精度だけでなく、造形効率や材料利用効率の向上も重要な課題となっていました。
また、研究室では市販装置では実現できない新しい造形技術の開発にも挑戦しており、微細な位置制御と安定したレーザー走査性能を両立することが、次世代の研究テーマを推進するうえで不可欠となっていました。
このように、研究の発展と応用領域の拡大に伴い、より高精細で効率的な造形を実現できるレーザー走査技術の確立が大きな課題となっていました。
02 導入の経緯研究の進化を支えるガルバノスキャナー
高精細研究に不可欠なレーザー走査性能
丸尾研究室では、二光子マイクロ光造形技術を活用し、100nm~1μmレベルの超微細な三次元構造の研究開発を行っています。研究テーマの高度化に伴い、光通信向けデバイスやマイクロ光学素子など、より複雑で高精度な造形が求められるようになりました。その実現には、レーザー光を高速かつ正確に制御できる走査システムが不可欠です。従来のアナログ制御方式では限界があったため、より高い位置決め精度を実現できるデジタル制御のガルバノスキャナーの導入を決定しました。
長時間造形と新たな研究テーマへの対応
二光子マイクロ光造形では、1回の造形に数十時間を要することもあり、その間、安定した走査性能を維持する必要があります。
また、研究室では、微小液滴を非接触で輸送する独自技術を用いたマルチマテリアル造形や、レーザー駆動マイクロロボットの開発にも取り組んでいます。こうした先端研究では、高精度な位置制御と長時間安定動作を両立することが重要な条件となります。
ガルバノスキャナーは、高精細造形だけでなく、多材料造形や次世代デバイス開発を支える基盤技術として期待され、導入が進められました。
03 導入の効果 高速・高精度化で広がる研究領域
- ガルバノスキャナー導入の効果
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- 造形速度の向上
- 高精細構造の研究加速
- 実験効率の向上
- 研究テーマの拡大
ガルバノスキャナーの導入により、XYステージ主体の方式と比較してレーザー走査の高速化が実現し、造形速度が大幅に向上しました。また、高い位置決め精度と長時間安定性によって、超高精細な三次元構造の研究開発をより効率的に進められるようになりました。
さらに、マルチマテリアル造形では液滴搬送と造形の両方に活用され、材料ロスの削減や実験効率の向上にも貢献しています。
これにより、従来は難しかった新しい研究テーマや応用分野への挑戦が可能となりました。
研究室学生のコメント
ガルバノスキャナーの導入によって、XYステージを用いる方法よりも、造形速度が大幅に向上しました。
また20時間など長時間造形においては、安定性が重要となりますので、キヤノンさんのガルバノスキャナーを使用させていただいてます。
04 今後の展望研究の可能性を拡げるキヤノンのガルバノスキャナー
光学デバイス開発を支える大面積・高精細造形へ
丸尾研究室では、XYステージとガルバノスキャナーを連動させることで、大面積かつ高精細な造形技術の高度化を進めています。研究対象は、マイクロレンズアレイ、メタレンズ、回折光学素子、ホログラム、光通信デバイスなど多岐にわたり、いずれもナノレベルの精度が求められる先端分野です。こうした高精度な光学部品を効率的に製造するうえで、ガルバノスキャナーの高速かつ精密なレーザー走査性能は欠かせない技術となっています。今後は光電融合技術をはじめとした次世代デバイス開発を支える中核技術として、さらなる活用が期待されています。
4Dプリンティングによる新たな機能創出
近年注目を集める4Dプリンティング分野でも、ガルバノスキャナーの活用が拡がっています。4Dプリンティングは、3Dプリントした構造体が熱や光などの刺激によって時間とともに形状を変化させる技術です。研究室では、温度や光に応答する材料を用いたマイクロマシンやマイクロアクチュエータの研究を進めています。ガルバノスキャナーの高速走査性能を活用することで、複数箇所への精密な光照射や高度な動作制御が可能となり、細胞操作や再生医療、バイオ研究など新たな応用分野の拡大が期待されています。
研究室学生のコメント
4Dプリンティング研究では、2つの点にほぼ同時にレーザーを当てたいのですが、ガルバノスキャナーを使用して、2つの点をあたかも同時に光が当たってるかのような動きができるので、非常にありがたいと感じています。
医療・宇宙分野への応用と社会実装の加速
今後は医療・バイオ分野に加え、宇宙分野への展開も見据えています。特に、小型衛星向け推進機の微細ノズルやエミッタアレイの開発では、高速かつ高精度な造形技術が不可欠であり、ガルバノスキャナーが重要な役割を担っています。
また、セラミックスやガラス造形による高耐熱・高耐久デバイスの研究も進められており、研究成果の社会実装に向けた産学連携も活発化しています。
ガルバノスキャナーは、先端研究を支えるだけでなく、社会課題の解決につながる新たな技術創出の基盤として、今後ますます活用の幅を拡げていくことが期待されています。
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本記事は取材時(2026年6月)のものです。
横浜国立大学 丸尾研究室
研究内容:3Dプリンティング技術の研究
所属学生:15名
所在地:横浜市保土ケ谷区常盤台79番4号
研究室の創設:2003年4月
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