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LCM(IT資産管理)とは?近年注目を集める理由からサービス選定のポイントまで徹底解説!

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IT資産におけるLCMとは、IT機器などの調達・導入・運用・廃棄といった一連の流れを最適化し、組織の業務効率化や生産性向上を目指す取り組みです。しかし、どのようにLCM運用を進めていけばいいのか悩む担当者は少なくありません。そこで注目を集めているのがLCMサービスです。本記事では、LCMの概要や課題、LCMサービスを活用することのメリットや注意点、サービス選定時のポイントまで詳しく解説します。

公開日:2025年8月6日

目次

LCM(IT資産管理)とは?

はじめに、LCMとIT資産の概要を理解しておきましょう。

「LCM」は、Life Cycle Management(ライフサイクルマネジメント)の略称です。製品やサービス、あるいは設備や建物などの資産の選定から処分までをひとつのライフサイクルになぞらえ、そのライフサイクル全体を適切に管理することで、資産の運用効率の最大化を目指す一連の仕組みを指します。これにより、組織全体の業務効率化と生産性向上が期待できます。

IT資産におけるライフサイクルとは、IT機器などの資産の調達・導入・運用・廃棄といった流れを指します。そして、このライフサイクルの中で生じる業務のすべて、あるいは一部を代行するサービスを「LCMサービス」と呼びます(LCMサービスの詳細は後述します)。

なお、IT資産は、企業が所有する情報技術に関連する資産全般を指します。たとえば、PCやスマートフォン、ネットワーク機器やプリンターなどのハードウェアをはじめ、OSやアプリケーションといったソフトウェア、およびそのライセンスなどが該当します。さらに、社内のデータベースやクラウドストレージに保存されたデータやウェブサイトなどもIT資産に含まれるものです。

国をあげてDX化が推進される今、IT活用は企業の成長と発展に不可欠です。IT資産をいかに適切に管理するかが、企業運営の鍵となっています。

LCMが近年注目されるわけ

IT資産管理は以前から行われているものですが、従来は財務視点における固定資産の把握が主な目的でした。しかし現在は、IT資産を効率的に管理・運用するLCMの考え方が重要視されています。なぜ今、LCMが注目されているのか、主な理由を解説します。

情報漏洩リスクの増加

PCやスマートフォン、タブレットなど、従業員が使用するデバイスの数や種類は多様化しています。それに伴い管理工数も増加し、適切な管理が困難になっているのが現状です。管理が不十分な場合、特に重大な損失を招く可能性があるのが情報漏洩です。

情報漏洩は、IT機器導入時の設定ミスや、廃棄の際に悪意のある第三者によってデータが復元されてしまうことでも発生します。PCでいえば、アクセス制限が適切に行われていない、知識不足でデータ消去が完全に行われていないなどの場合に起こり得ます。

また、テレワークの浸透も、情報漏洩リスクを高める要因のひとつです。社内ネットワークのセキュリティは万全であっても、従業員が外出先でセキュリティ対策が不十分な無線LANを利用したり、社内ネットワークを介さずにネット接続したりすれば、マルウェア感染やデータ流出のリスクは避けられません。

本来ならば、テレワークに適したセキュリティ対策が必要ですが、自社でカバーするのは難しいのが現状です。こうした背景から、IT資産の適切な設定・廃棄を可能にするLCMの考え方が注目を集めています。

IT部門のミッション増加、人手不足

近年、経営戦略のひとつに位置付けられているDX推進。IT部門はDX推進の要として、さまざまなミッションが課せられています。一方で人材不足も深刻な状況にあり、複数業務をぎりぎりの人員で対応している企業も少なくありません。企業によっては、独立したIT部門を持たず、総務などのバックオフィス部門が兼務していることもあるでしょう。

このような状況下において、IT資産管理は定期的な棚卸しが必要だったり、新規採用や退職、人事異動があるたびにIT機器の調達・導入・運用、廃棄が必要になったりと、手間や工数がかかるのが特徴です。適切なタイミングで対処できなければ、従業員の業務効率の低下を招くなど、トラブルの原因になってしまうこともあります。こうした背景からもLCMの必要性は増しています。

IT関連の管理業務の増加

管理対象となるIT資産の拡大も、LCMが求められている理由のひとつです。従来はIT機器の管理がメインでしたが、インストール型のソフトウェアにはじまり、現在では業務効率に役立つさまざまなSaaSが登場し、ソフトウェアの利用が多様化しています。これに伴い、アカウント管理や契約状況の把握なども必要になりました。部署ごとで利用するソフトウェアが異なれば、その業務はさらに増加します。

加えて、個人所有のデバイスの利用(BYOD)も増え、セキュリティ対策の方法もより複雑になっています。先述のようにセキュリティ対策不足は情報漏洩を招く原因になるため、IT部門の負担は増えるばかりです。IT部門の業務負担の軽減、業務効率化を実現するためにも、LCMの整備が急務となっています。

LCMサービスの活用

これまで見てきたとおり、LCMは企業にとって重要な業務であるものの、自社ですべてを網羅するには課題が多く、対応が後手に回っている企業は少なくありません。そこで導入が進んでいるのがLCMサービスです。

ここからはLCMサービスの活用を検討されている方に向けて、サービスの概要や導入のメリット、効果が期待できる企業の特徴やサービスの選定ポイントなどを解説します。

LCMサービスとは

LCMサービスとは、IT資産の調達・導入・運用・廃棄までをひとつのライフサイクルとし、そのプロセスで生じる業務を代行するサービスのことです。すべての工程をワンストップで対応するサービスもあれば、企業が必要とする工程のみを代行するサービスなど多岐にわたります。いずれにしても、LCMの専門知識とノウハウをもつ人材が担当することで、企業が抱えるIT資産管理の課題解決が可能になります。

LCMサービスの主要プロセスは次のとおりです。

  • 調達

    使用目的に応じたIT資産の選定、最適な調達方法(購入・リース・レンタルなど)の提案

  • 導入

    導入したIT資産のキッティング(セットアップ作業)、運用設計、セキュリティ対策

  • 運用

    ヘルプデスク業務、故障対応、ディザスタリカバリ(災害復旧)

  • 廃棄

    端末の撤去と撤去時のデータ消去作業、下取りなど

LCMサービス活用のメリット

LCMサービスの導入前に、得られる具体的なメリットを整理しておくことが成功の鍵です。

主なものとして次の3つが挙げられます。

  • IT資産の最適化・コスト最適化
  • IT資産管理の負荷軽減
  • コンプライアンス強化

それぞれ詳しく見ていきましょう。

IT資産の最適化・コスト最適化

LCMサービスを利用することで、IT資産の適切な管理・運用が可能になります。具体的には、未使用のハードウェアや不要なライセンス、リース期限や保証期間が明確になり、スムーズで無駄のない調達計画を立てられるようになります。必要なときに必要なIT資産を従業員に配布できれば、組織全体の業務効率化につながり、従業員満足度もアップするでしょう。調達計画が適正に行われれば、無駄な調達費や保証外修理などにかかる費用が可視化され、コスト削減も期待できます。

さらに、業務の一部をアウトソースすることで、業務量に応じた柔軟なリソース運用が可能になります。たとえば、繁忙期の対応要員を常に社内で抱えていると、閑散期には余剰人員が発生してしまうケースもあります。LCMサービスを活用すれば、委託先が繁閑に応じた人員配置を行うため、こうした非効率を避けやすくなります。また、アウトソーシングによって本来は固定費である人件費を変動費化することができ、コスト構造の柔軟化や資産効率の向上にもつながります。

IT資産管理の負荷軽減

LCMを外部に委託することで、IT資産管理を担う人材の業務負担を減らすことができます。これまで見てきたように、IT資産の調達から廃棄にかかる業務は煩雑なうえ膨大です。これらをアウトソースすることで、IT部門などの担当者は本来業務に専念することができ、結果として企業全体のパフォーマンス向上が期待できます。

また、サービスによっては社内ヘルプデスク業務も任せられるケースもあり、IT部門のさらなる効率化が可能です。さらに、業務過多が原因による離職が課題になっている企業であれば、人材の流出を防ぎ、優秀な人材の定着にも効果を発揮します。労働力不足が深刻化する現代では、コア業務とノンコア業務を棲み分け、適正に人材を配置することが経営戦略のひとつになっています。

セキュリティとコンプライアンスの強化

IT資産を所有すると、常に情報漏洩のリスクが伴います。IT資産の数や種類が限られていた時代は、セキュリティ対策にかける時間や費用にゆとりがあった企業も、現代ではセキュリティ品質に不安を抱えたり、知識や技術不足でそもそもセキュリティ対策が脆弱になってしまっていたりすることも少なくありません。中でも廃棄時のデータ消去に課題がある企業は多いでしょう。また、昨今はシャドーITによるリスクも軽視できません。SaaSの普及に伴い、部署が独自にシステムを導入したり、従業員が個人デバイスを業務利用したりするなど、IT部門が関知していないIT機器やシステムは増加傾向にあります。

こうしたIT資産のセキュリティの課題に対するソリューションがLCMサービスです。LCMサービスを利用することで、デバイスへの統一したセキュリティ設定が可能になり、自社では気づけないセキュリティ課題の解決策を提案・実装してくれます。

また、コンプライアンスの向上も期待できる効果です。使用するIT資産が増えると、意図しないライセンス違反が生じてしまうことがあります。LCMサービスでIT資産の使用状況を網羅することで、契約違反や法的リスクの回避が可能になります。

効果が期待できる企業

DX化が進む中、あらゆる企業でLCMは重要な役割を果たします。その中でも特に以下のような企業はLCMサービスとの相性が良く、高い費用対効果を期待できるでしょう。

  • 多くのIT資産を運用している企業
  • 全国に拠点を持つ企業
  • IT人材の不足やコスト最適化を検討している企業
  • 情報セキュリティを重視している企業

自社でIT資産管理が困難になってしまう理由は「IT資産の数や種類、利用場所の複雑化」「人材不足」「セキュリティ対策不足」などが挙げられます。上記のうちひとつでも該当する場合は、LCMサービスの導入を検討してみましょう。

LCMサービス選定のポイント

では実際に、どのような点に注意してLCMサービスを選ぶべきでしょうか。サービス選定時の主なポイントは次の4つです。

  • サービス範囲
  • サポート体制
  • セキュリティレベル
  • センター品質

LCMサービスは、提供する事業者によって対応範囲が異なります。対応機器については、PCやモバイル端末に特化していたり、無線LANやVPN機器などネットワーク構築を得意としていたりとさまざまです。機器のメーカーを指定したい場合は、対応メーカーまで細かくチェックする必要があります。また、IT機器のレンタルや買い取りが可能かどうかも確認しておきましょう。

サポート体制も重要です。故障やトラブルが発生した際、迅速かつ適切なサポートを得られなければ、業務に支障が生じ、大きな損失を生む可能性があります。拠点が複数に分かれている企業や、テレワークの割合が多い企業では特に柔軟なサポート体制が必要です。

セキュリティ対策も事業者によって違いが生まれる項目です。特にデバイスの廃棄時やリース返却時のデータ消去の方法は必ず確認してください。データ消去証明書の発行有無も確認しておくと安心です。

LCMサービスでは、PC等のキッティングを事業者のセンターで一括して行いますが、このセンターの品質も事業者によって異なります。キッティング品質にばらつきがあると、後の運用フェーズでトラブルを引き起こしかねません。センターの作業品質が安定しているかどうかも確認しておきましょう。

まとめ

企業が所有するIT資産はPCやスマートフォン、サーバー、ソフトウェアライセンスなど多岐にわたります。そのため、LCMの全工程を社内だけで完結させるのは、多くの企業にとってハードルが高くなっています。

そこで検討したいのが、業務を外部に委託できるBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)の活用です。LCMをアウトソーシングすることで、自社のIT人材の負担を軽減できるだけでなく、IT資産管理にかかるコストや情報漏洩リスクを最小限に抑えることが可能になります。特に大量のデバイスを所有する企業やセキュリティ対策に不安のある企業は、導入することで大きな効果を得られるでしょう。

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